マルタ留学中に聞いた、ボルソナロ大統領に対するブラジル人のリアルな意見をまとめてみました
2019年1月、ブラジルでは新しい大統領が就任しました。
そう、コロナ禍で過激な発言を繰り返す「ブラジルのトランプ」こと、ボルソナロ大統領です。
彼が就任して間もないころ、私はマルタに語学留学をしていました。
マルタは欧米に比べて物価が安いため、南米からの留学生が多く集まっていたんです
南米からの留学生のなかで、一定数いたのがブラジル人でした(南米留学生の2~3割程度)。
同じクラスのなかに、なんとブラジル人が3人。
そのなかで、彼らの「ボルソナロ大統領」に対するリアルな意見を聞いたので、この記事でご紹介したいと思います。
ブラジルのボルソナロ大統領ってどんな人?
2019年1月に就任した、ブラジルのボルソナロ大統領(本名:ジャイール・メシアス・ボルソナーロ)は軍人出身です。
2020年に入ってから、コロナウイルス対策で有名になってしまいましたね…
彼は、コロナウイルスは「ただのカゼ」と発言し、経済活動を優先。
そのため、貧困層やスラム街(ファベーラ)でのコロナウイルス蔓延が止まらない状況になっています。
そして挙句の果てには自分も感染し、マスク着用せず記者から訴えられる…
さて、コロナウイルス対策以外に目を向けても、なかなか過激なボルソナロ大統領。
治安対策による犯罪の減少*1や、財政改革(特に年金問題)について一定の評価を受ける一方、男権主義(いわゆる男尊女卑)・性的マイノリティへの反対など、「ブラジルのトランプ」と言われるほど過激な発言を繰り返しています。
ボルソナロ大統領が就任するまでは、労働党とよばれる人たちが政権を握っていました。
労働党の政権下では、労働組合に参加する貧困層の人たちや公務員には、多額の年金が支給されていました。
つまり、いままでは貧困層や公務員ファーストな政権だったわけです。
しかも、年金などの社会保障費で国家財政が圧迫されて、財政赤字になっていたんですね
それが面白くない富裕層たち。
そこで「年金改革をするぞ!公務員の年金を減らすぞ!」と訴えるボルソナロ大統領に富裕層が投票。
ボルソナロ大統領が誕生したのです。
ブラジルはいま、富裕層(ボルソナロ派)vs貧困層&公務員という二極化が進んでいます。
ボルソナロ大統領に対するブラジル人のリアルな意見
ボルソナロ大統領が就任して間もない2019年1月下旬、私はマルタに語学留学をしていました。
私が所属していたクラスに、3人のブラジル人がいました。
この3人のブラジル人のうち、2人の男女がボルソナロ大統領に対する議論を何度か交わしており、横から見ていると「面白いなぁ」と思ったのでご紹介しますね。
議論を交わしていたブラジル人①ペドロ(男性)
1人目のブラジル人はペドロという名前で、留学中に31歳を迎えた男性です。
マルタにやってくる前は、企業につとめた経験があり、礼儀正しく賢い人です。
授業は絶対に休まず、できる限り先生の前を陣取り、積極的に質問したり、意見を言うタイプです。
お祭り騒ぎのトルコ人と違って(笑)温和な性格なので、人の意見にも耳を貸すし、休憩中も多くの人と交流しようとしていた真面目な人でした(笑)
マルタから帰国後、再就職をして結婚したそうですよ~!
議論を交わしていたブラジル人②パウラ(女性)
もう一人はパウラという名前で、20歳の女性です。
マルタ留学前はイギリスにも1年間留学していたそうで、クラスのなかでもずば抜けて英語が上手でした。
大学の薬学部に在籍していて、頭がよく明るく活発な人です。
ただ、すでに英語が喋れるからなのか、毎週末、ご両親とヨーロッパ旅行に出かけて授業には参加しない日が多く、授業に来れる日でも寝坊で遅れてきたりと、ちょっとルーズな印象。
おまけに留学に持ってきたカバンはグッチ!(笑)
ブラジル人のなかでも「富裕層」と呼ばれるタイプの人ですね~
富裕層vs一般家庭出身者のバトル
さて、この流れでもうお分かりの方もいらっしゃるでしょうが、ペドロ(男性)は一般家庭、パウラ(女性)は富裕層出身です。
つまり、こういうことです。
- ペドロはボルソナロ反対派
- パウラはボルソナロ賛成派
そのことで、度々クラスでぶつかり合います。
この間就任した大統領についてどう思う?(先生)
彼は最悪だよ。貧困層に目もくれない。スラム街だって治安改善されていないよ(ペドロ)
ボルソナロは素晴らしいわよ。今までの大統領が最悪だった(パウラ)
何言ってるんだ?ボルソナロは貧困層からお金を奪ってるんだ(ペドロ)
違うわ、国民一人ひとりが裕福になるために、不要な支出をカットしてるのよ!(パウラ)
┐(。・ε・。)┌ャレャレ(先生)
とまあ、こんな風に議論をしています。
ペドロは、特にスラム街について熱心に話していました。
スラム街は失業者や犯罪の多い貧困層の居住地区で、日本以外の先進国にも存在する根強い課題です。
そこをなくす、もしくは失業者を救うために、ボルソナロ大統領は貧困層に目を向けた政策をすべきだ、と主張していました。
反対にパウラは、過去の貧困層や公務員ファーストの政治を毛嫌いしていました。
公務員でなければ、手厚い年金を受け取れない制度を問題視していました。そして、ブラジルはもっと発展し、経済的にも世界から認められる国になるべきだと話していたのです。
もちろんパウラも、スラム街については色々と考えるところはあるようで、なくなったら嬉しいと話していました。
しかし、ヨーロッパを見ても一定のスラム街があるものですし、完全に消し去ることはできません。
だからこそ「国の経済力を底上げすることが先決だ」と考えて発言していたようです。
ブラジル人の政治に対する熱意を感じた
彼らの議論を横で観察していたら、ブラジルが抱えている「富裕層vs一般家庭」という構図を間近で理解できました。
私は日本人なので、ボルソナロ大統領を評価する権利を持っていません。
ですから、ペドロとパウラの言い分はどちらも正解だと思っています。
そして、若いうちから国のことや政治・経済のことについて話す彼らは、とても輝いて見えました。
彼らは言います。
日本は社会保障(特に皆保険制度)が充実していて、貧富の差がほとんどなくて、犯罪が少なくて、トイレにウォシュレットがあるからいいよね
日本は恵まれていて羨ましいと言います。
確かに日本は先進国で、治安もよく(スリや強盗にあいにくいという意味で)、ウォシュレットがあって清潔です。
しかしブラジルと違って、日本は「政治に対しての知識が少ない」「政治を語ると嫌われる」という根強い風習を持ち合わせているのです。
私からすると、政治への積極的な参加という意味では、ブラジルがうらやましく感じたのでした。
本人たちにとってはコロナ禍のことを含めても、頭の痛い話でしょうけどね…
少なくとも今後数年間において、ボルソナロ大統領は暴れ回るでしょうが、ブラジルの二極化が緩和されて、ますます発展することを祈っています。
あらためて留学という経験を通し、ブラジルの「いま」を感じ取ることができて、個人的には嬉しかったな、というエピソードでした。
*1:ブラジルの2019年1~7月の殺人件数は、前年同期比22.6%減