数年前、軽い気持ちで一般企業からNPO法人に転職しました。しかし実際に入職してみると、理想と現実の「ギャップ」がすさまじく、痛い目を見ました。
そのギャップのひとつが「お給料」です。
このページをご覧の皆さんも、NPO法人への就職や転職を検討されていると思います。
しかしNPO法人とは、あなたが想像している以上に大変で過酷なものです。
特に転職を考えられている方は、お給料やNPO法人を取り巻く環境、一般企業との違いを事前にしっかりチェックしておきましょう。
- NPO法人の給料・福利厚生など
- NPO法人のお仕事と収入源について
- お給料の増やし方
本記事では、中小のNPO法人を対象としております。ぜひ今後の就職、転職活動の参考にしていただければ幸いです。
一般企業からNPO法人に転職。過去にNPO法人で働いた経験なし。業界・業種ともに未経験。
NPOへ転職しても給料は支給される!
NPO法人に就職・転職したら、ちゃんとお給料は支払われるの?
答えはYes、当然お給料は支払われます!
ただし、お給料の金額が良いかどうかは別の話。
ここからはNPO法人に就職した私の実体験に基づき、その当時のお給料や福利厚生等について記載します。
あくまでも私が就職した業界のお話です。すべての業界に当てはまるわけではないので、あらかじめご了承ください。
- 給料について
- 賞与について
- 通勤手当などについて
- 住宅手当について
- 社会保障について
- 退職金について
NPOでもらえる給料額
NPO法人に入職すると、毎月お給料がもらえます。
「NPO法人に入職する」というのは、「一般企業に入社する」と同じ意味ですから、正社員(もしくは契約社員)として働くことを意味しています。
「NPO法人ではお金がもらえない」と思っている人の多くは、「ボランティア団体」と混同しているのでしょうね
もちろん、入職する前にお給料の交渉があります。これは普通の会社と変わりません。
ここで一般企業であれば、前職のお給料額・過去の経験を考慮して、前職と同額・増額となる場合が多いです。(未経験の場合は、下がる可能性もありますが)
しかし、NPO法人はどうでしょうか。
後ほど説明しますが、NPOとは利益を追求しない組織です。
団体のお金は基本的にカツカツで余裕がないため、支給額が一般企業の「新卒」と同等、もしくは下回ることもあります。
前職ですばらしい成績を残した優秀な人材であっても、転職先の業界知識がなければ、新卒以下の金額を提示される可能性があります。
私の場合、転職前が24~5万円、NPO法人への転職後は20万円でした(支給額)
16~20万円あれば良い方ですね…
逆に少しでも業界知識があり、即戦力とみなされる場合は、お給料はアップ。
はっきりとは言えませんが、30万円もらえれば御の字だと思います。
また、立ち上げたばかりのNPO法人はさらに深刻です。ボランティアに近い状態(時給300円くらい)で就業させられる可能性もあります。
以上のことから、お給料を増やしたい方には、NPO法人への就業をお勧めしません。
新卒だったら我慢できるかもしれませんが、転職先として選ぶには厳しいと言わざるを得ないでしょう。
NPOでもらえる賞与額
幸いにもボーナスが出る組織に就業したので、賞与は頂けました。 しかし実績のあるNPO法人でなければ「賞与は出ない」と思っていた方がいいです。
これは一般企業にも言えることですね ちなみに「実績のあるNPO法人」とは、政府や地方自治体、メディアにもそれなりに認知されているような組織と思ってください。
その規模になるには、最低でも10年は掛かると思います。
実績のあるNPO法人でさえ、ボーナス支給額は給与約1か月分(私の場合は20万円)です。夏と冬に出るところもあれば、夏だけのところもあります。
一般企業のように2か月分、3か月分などの夢は見ない方が良いです。
貰えたらラッキー!というくらいの気持ちでいるのが望ましいですよ。
通勤手当・交通費等について
私の場合、通勤手当・交通費は全額支給されました。
さすがに通勤手当・交通費は出るところが多いと思います。
ただし、日当や宿泊費に関しては、団体によって支給されるかどうか変わります。
私の所属していた団体は、国内・海外への出張がありました。 日当は職員のランク・出張先・出張時間によって変わります。
宿泊費に関しては、一泊当たりの上限が定められていました。場合によっては宿泊費を出してくれない団体もあるので、注意してください。
住宅手当はない?
住宅手当は支給されない可能性が高いです。注意しておきましょう。
さきほど、通勤手当は全額支給されると書きました。しかし、お金の足りない団体はこの通勤手当さえも減らしたいと思っています。
遠方からの通勤は、距離に応じて交通費が跳ね上がるため、渋られる傾向にあります。
私も事務所の近くに住むことをお勧めされました(笑)
職員が事務所の近くに住む場合、団体としては、交通費も減らせるし住宅手当を出さないので、負担額が減りますね。
逆に職員の負担は増えてしまいます。 NPO法人に入職したい方は、通勤距離なども考慮に入れた方がよいでしょう。
社会保障について
NPO法人に入職すると「厚生年金」「雇用保険」へ加入できます。
入職した人は年金手帳を就業先に預けます。また、雇用保険に加入するため「雇用保険被保険者証」も発行されます。
退職する場合は、年金手帳とともに返却されます。また、失業保険を受給するための離職票も発行されます。
この辺りは、一般企業と変わりませんね
社会保険(対比:国民健康保険)へも加入します。就業先の団体が所属する健康保険協会・組合への加入となります。
NPO法人は規模が小さいので、地域の保険協会・組合に所属していることが多いようです
退職金について
退職金は出ないと思っておいた方がいいでしょう。
最近は、一般企業でさえも退職金を支給しないところが増えてきました。代わりに確定拠出年金を取り入れているところが多いです。
私が所属していた団体は、退職金はおろか、確定拠出年金制度も取り入れていませんでした。
NPOの仕組みとは?転職前に知っておくべきこと
さて、この時点でみなさんはNPOの現実を突きつけられているわけですが、いかがでしょうか(笑)
NPOへの就職・転職をやめておこうかな…
と思った方、やめてもOK。ノープロブレムです。
ただし「なぜNPOはお金に厳しいのか?」知っておいても損はないと思います。
今後のために、ぜひ勉強していってくださいね!
NPOとは?
そもそもNPOとは、どんな団体かご存じでしょうか?
NPOとはNon-Profit Organizationの略で日本語に訳すと「非営利団体(組織)」です。NPOには種類があり、なかでも法人化されたものが「特定非営利活動法人」、つまり「NPO法人」です。
NPO法人は貸借対照表の公開が義務付けられており、会計監査や総会(企業の株主総会と同じようなもの)もあります。
みなさんが就職しようとしているNPOとは、NPO法人であると覚えておきましょう。
また、NPO(非営利団体)は「利益の再分配を行わない団体」と言われています。
一般的に会社(営利団体)というのは、もうけた利益を株主や社員などに分配します。たとえば利益が増えたら、株主への配当金が増えたり、社員の賞与額が増えたりしますよね。
しかしNPO法人では、利益を自分たちの事業(社会貢献や慈善活動)のために使います。 ですから利益が増えたとしても、職員へ利益の配分は行われません。
ただし利益の増減にかかわらず、昇級・昇格によって給料があがることはあります。
NPOのお仕事
ではNPO法人のお仕事とは、一体なんでしょうか? 基本的には「慈善活動」や「社会貢献活動」と考えてください。
国境なき医師団やWWFといった団体をイメージすると分かりやすいですね。
では、具体的にどんなことをするのか、私が所属していたNPO法人の仕事をピックアップしてみました。
- 政府や企業への提言
- 国際会議への参加・提言
- 一般市民への教育
- 民間企業や地方自治体の支援
- 助成金の獲得
- イベントの開催(主催・協賛)
- デモなどの実施・参加
- 会報の作成・発送
- ホームページの修正
- 各種SNSでの広報
上記をご覧いただいてわかるとおり、取り扱っている仕事は多岐にわたります。
ここに挙げていない仕事も、もちろんあります。
国境なき医師団日本やWWFジャパンのように、日本で名前の通っている団体は、在籍する職員も多いです。
しかし、NPO法人の多くは少人数で仕事をしています。
10~20人体制で仕事を回している団体も多く、少人数で事務作業から政策提言・イベントの開催など全ての仕事をこなす必要があります。
NPOの収入源は寄付と助成金
NPO法人は一般企業と違い、利益を追及しません。つまり社会貢献をするのが目的であり、利益を得るのは二の次です。
とはいえ、利益が出ると自分たちの活動費用に回せるので、利益はあった方がいいです。なんか矛盾してる気がしますけどね…
じゃあ、利益を追及しないのに、どうやって組織を維持するのか?
その答えは「寄付」と「助成金」です。
まずひとつ目は寄付。
寄付とは、その名の通りお金を団体に寄付していただくことです。
NPO法人は世の中の役に立つ活動をしています。その活動に賛同してもらったら「会員」となっていただき、お金を寄付してもらいます。
- 親のいない子どもたちへの支援
- 途上国での医療活動
- 女性活躍のための支援
- フードロス支援・・・等
私の所属していた団体は、1年ごとに会員更新をしていました。
企業や法律関係者、議員さんなどは法人名義、そして個人で支援してくださる方もいらっしゃいました(60歳以上のシニアの方々が多いです)。
個人の方は平均で1名あたり5,000円~10,000円ほどです。
この寄付を増やすこと(つまり会員を増やすこと)が、NPOにとっては大変重要な取り組みなのです。
次に「助成金」です。
企業は、CSR(企業の社会的責任)の一環で、様々な社会貢献活動に取り組んでいます。
具体的には
- お子さんとの野菜作り体験
- プラスチックの排出量を減らす
- 工場排水をクリーンにする
- ごみの回収
- 作文コンクールの開催
などですね。
企業のCSRレポートに、取り組んだ内容が報告されています。
一方、間接的に社会貢献する方法があります。
そのひとつとして「中小企業やNGO・NPOの活動を支援する」ための助成金プログラムがあります。
お金を出す企業が、実際のアクションを起こすわけではありません
助成金を獲得した中小企業やNPOが社会貢献してくれれば、間接的に企業の社会貢献になりますよね。
こういった企業の助成金プログラムに応募してお金を勝ち取り、団体活動の費用としているのです。(もちろん助成金を獲得するには審査に受からなければなりません)
ここで皆さんに覚えておいてほしいことがあります。
それはNPO法人はお金に余裕がないということ。 会員が減ってしまえば寄付金が減り、助成金の審査に落ちれば、活動資金が不足します。
常に活動資金どうやって獲得するか?ということに頭を悩ませているため、どうしても職員へのお給料や待遇がよくありません。
活動内容はとてもすばらしいのですが、仕事量に見合ったお給料が支払われないという、悲しい現実があるのです。
NPOでは副業OK?転職後に給料を増やす方法
ではNPOに就職したら、一度も昇給しないのでしょうか?どうすればお給料を増やすことができるのでしょうか?
一緒に見ていきましょう。
団体への収入を増やす
NPO法人の一番の悩みはどうやって収入を増やすか?です。
入ってくるお金が安定していると、当然、職員に支払うお給料も増えていきます。
私が所属していた団体は、設立当時は時給300円程度だったそうですが、会員数の増加により寄付額が増えて、給料が徐々に上がっていったそうです。
ですから、会員(寄付)を増やすことは、NPOにとって最大の使命なんですね。
昇進、昇給する
所属団体にもよりますが、昇進・昇給の可能性はあります。
私が所属していた団体では、勤続年数と成果によって昇級がありました。
成果というと具体的な説明は難しいのですが、たとえば国際会議で提言した内容が採用されたり、イベントを主催して成功を収めたりすると、成果とみなされるようです。
副業する
入職して驚いたことがあります。
職員の多くが堂々と副業をしているではありませんか!
ただし副業といっても、会社員がアフター5にやるような、アフィリエイトやライター業ではありません。
政府機関のメンバー、企業の顧問、学校の非常勤講師などをしているんです。
業界にもよりますが、NPO法人では昇級・昇給が簡単ではないので、堂々と副業せざるを得ないそうです。
ただし、こうした副業はその分野で一定の成果を挙げていないと認められません。
職員全員が副業できるとは限りませんのでご注意ください。
また、公にできない副業(ブログ、アフィリエイト、YouTuber、ライターなど)をする場合は、事前に所属団体に確認しておいた方がいいでしょう。
NPOへの転職前に給料や賞与をチェックしておこう
最後に、ここまで説明した内容をまとめておきます。
あくまでも私の経験で、すべての団体に当てはまるわけではありませんので、ご注意くださいね。
- 給与は発生するが少ない
- 賞与は「ある」方が珍しい
- 通勤手当や交通費は支給される
- その他手当は支給されないかも?
- 退職金や拠出年金制度はないかも?
- 厚生年金や雇用保険はある
- 少人数で仕事を回している
- 寄付金と助成金で成り立っている
- 公の副業をしている職員がいる
NPO法人とは非営利団体であり、社会貢献を目的とする組織です。
利益を追及しない代わりに、団体への収入が不足しがちなので、寄付や助成金の獲得に力を注いでいます。
その影響で、費用は最小限に抑えなければならず、職員への給与や賞与などの待遇も良くありません。
それでも頑張れる、社会貢献したい「覚悟のある」人だけがNPO法人に臨むと良いでしょう
もし入職を希望されるのなら、事前に給料や賞与の有無などを調査してくださいね!